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大阪地方裁判所 平成2年(わ)1474号 判決

本籍

熊本県飽託郡天明町大字川口四四〇四番地

住居

大阪府吹田市千里山東四丁目二二番二五号

会社役員

中村百合子

昭和一八年五月一九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官梶山雅信出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年二月及び罰金三〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、中村実業株式会社(飲食業)の代表取締役として同会社を経営する傍ら、株式取引を行つているものであるが、自己の所得税を免れようと考え、

第一  昭和六一年分の実際総所得金額が七〇七四万四八九七円(別紙(一)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、仮名で株式の継続的取引を行つて同取引による収入のすべてを除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和六二年三月一六日、大阪府吹田市片山町三丁目一六番二二号所在の所轄吹田税務署において同税務署長に対し、昭和六一年分の総所得金額が八二八万五〇〇〇円で、これに対する所得税額が三六万三〇〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額三四九六万五八〇〇円と右申告税額との差額三四六〇万二八〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた、

第二  昭和六二年分の実際総所得金額が九六四三万八〇九五円(別紙(二)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、前同様の方法により所得を秘匿したうえ、前記税務署長に対し、右所得税の法定納期限である昭和六三年三月一五日までに所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もつて不正の行為により、昭和六二年分の所得税額四七七三万三八〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた、

第三  昭和六三年分の実際総所得金額が八六二一万一五九八円(別紙(三)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、前同様の方法により所得を秘匿したうえ、平成元年三月一五日、前記吹田税務署において、同税務署長に対し、昭和六三年分の総所得金額が六六四万五〇〇〇円で、これに対する所得税額は源泉徴収税額を控除すると二五万四三三〇円の還付を受けることになる旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額四〇六四万七四〇〇円と右申告税額との差額四〇九〇万一七〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた

ものである。

(証拠の標目)

(注) 括弧内の算用数字は証拠等関係カードの検察官請求分の請求番号を示す。

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書三通(54ないし56)

一  被告人に対する収税官吏の質問てん末書一五通(39ないし53)

一  竹下雅彦(21)、後藤博文(28)の検察官に対する各供述調書

一  竹下雅彦(20)、中村花子(22)、中村英光(二通、23、24)、森田正昭(25)、高橋一郎(26)、後藤博文(27)、奥山晃一郎(31)、岸上繁(32)、中田秀一(35)、中村英男(36)に対する収税官吏の各質問てん末書

一  平澤勝作成の供述書(33)

一  川口文人作成の確認書(34)

一  収税官吏作成の各査察官調査書(7ないし12、14ないし18)

一  検察事務官作成の報告書(37)

判示第一の事実について

一  吹田税務署長作成の証明書(4)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(1)

判示第二の事実について

一  収税官吏作成の査察官調査書(19)

一  吹田税務署長作成の証明書(5)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(2)

判示第三の事実について

一  収税官吏作成の査察官調査書(13)

一  吹田税務署長作成の証明書(6)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(3)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は所得税法二三八条一項に該当するので、いずれも所定の懲役と罰金とを併科することとし、かつ、各罪につき情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については、同法四八条二項により所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年二月及び罰金三〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 仙波厚)

別紙(一)

修正損益計算書

(中村百合子)

自 昭和62年1月1日

至 昭和62年12月31日

〈省略〉

別紙(二)

修正損益計算書

(中村百合子)

自 昭和62年1月1日

至 昭和62年12月31日

〈省略〉

別紙(三)

修正損益計算書

(中村百合子)

自 昭和63年1月1日

至 昭和63年12月31日

〈省略〉

別紙(四)

税額計算書

中村百合子

〈省略〉

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